もの思う葦

アメリカに新しい大統領が誕生した。彼の使う言葉のセンス、品位のなさ、その容姿などから決して人に好かれるタイプではない。しかしそんなことは本人もわかっているだろうし、だいたい人に好かれるために大統領になったわけでもなかろう。私が目にした限りではトランプ氏のことをよく言っているメディアはなかった。トランプ氏を批判することは簡単だ。しかし彼の言っていることのいくつかはごく当たり前の、常識的なことのように思える。

自分の国で使うものは自分の国で作る。これは地産地消の考え方だ。これについては食糧問題において見れば賛同する人は多いのではないか。たとえば食糧自給率の極端に低い日本は本当にこのままでよいのか。

移民、難民の問題。トランプ氏の言い方は確かに極端だ。しかしリベラル派が時々唱える「人は何でも分かり合える(はずだ)」という考え方は理想主義を通り越して私にはもはや「甘え」に思える。人と人の間に壁はいらない、という考え方も同様だ。美しい理想のように聞こえるので、それに反対する人はコチコチの保守主義者かファシストみたいに言われそうだが、私は人と人とは程よい距離を保って初めて友好的に付き合える、と考える。

私たちの暮らす日常において、この「程よい距離感」というものに明確な基準はなく、結局それはお互いのセンスにかかっている。つまり、そのセンスのない人が無作法に人の心に踏み込んできた場合、こちらで距離を取るか、心理的または(時には)物理的フェンスを設けざるをえない。

望ましい最高の関係とは精神的、経済的に自立した人同士がお互いを尊重しあい、ほどほどのおつきあいすることである。それぞれの国の文化、民族を何もかもフュージョンすることがインターナショナルということではないし仲が良いということではない。それぞれの民族、国家は経済的、文化的に自立して初めて他の国と対等に友好的に付き合える。これは日常の人間関係においても同様だ。自宅に他人が許可なく上がり込んで好き勝手なことを始めたら、誰だって嫌だろう。

もちろん移民、難民の問題は貧困や紛争が背景にあり、一朝一夕に解決する問題ではない。同情すべき点は多いものの、自分の国を脱出したいと思う人達が最終的に彼らが母国に戻り暮らせるように手助けすることが結局、唯一の解決策である。